輝く店が無い
かつては店舗を見るというのは必須のマーケティングリサーチであった。自分もインテリアや小売の関係上、世界中の街でどこに行ったらどこの店を見るという慣習が出来上がっていた。しかし、最近はそういう店がどんどん減っている。もちろんチェーン店はいまだに健在のところが多いが、個性豊かな1〜数店舗という店がほとんど無くなってしまった。N Yに行けばヘンリベンデルやJeffreys、パリにはコレットというように銘店があったが、今残るのはLAのMaxfield、ミラノのcorso como、あとはギャルソンがやっているDover Street Marketくらいしか思い浮かばない。おそらく小売全体でそんな現象が起きているのかもしれない。確かに個人で店を立ち上げるにはリスクも多いし、せっかくそのオーナーの選美眼で集めた素敵なセレクトショップをつくっても実際に買うのはネットでという客が多い今はアホらしくて店なんか開けられないというのが現実的な話だろう。そういう時代だからか新しいものを見かけることが少なくなった。そして新しいものを生み出しても長続きできない世の中だ。情報の流れが早い今だから3年もすればもう古臭いものとして飲み込まれてしまう。よく自分も「生むのは簡単、育てるのが大事」と言っていたが今や3年で終わりという計画でやるか、10年続けるつもりで最初から長期戦で10年計画を立ててやるぐらいの戦略が無いと、ポンっと世の中に生み出すだけでは存続できない。
今回パリでコンランショップ無き跡にZARAHOMEがRue de bacという通りの名前をとって「BAC117」という店舗を出していた。昨年にオープンしたがPOP UPらしい。実際にはZARAHOMEの商品とセレクトした家具や小物(ZARAより高級)のミックス、そしてZARAの洋服という組み合わせだったが、セレクトした商品が良いセンスだったせいもあり全体ではZARAHOMEより良い店だなぁと思った。期間限定ゆえに儲かるというレベルではないと思うがZARAのブランディング上は効果がある仕掛けだろう。淡い色合いの天然素材を使ったようなトーン&マナーだったので上品に見えたせいもあるが大人っぽい印象で個人的には好きな感じだった。ことインテリアに関しては全米で成功しているRHという店舗があるが(昔はレストレーションハードウェアという店名だった)、そこも無彩色の大人っぽい印象で評判の良いレストランを併設した店舗を増やしている。
昔はよく街を歩いたものだ。どこの街に行ってもガイドブックではなく、自分の嗅覚で歩いては新しい店を発見したりすると嬉しかった。今でも世界中歩けば素敵な店はたくさんあるのだと思う。確かにこんな時代だからビジネスとして成功するにはハードルが上がったと思う。物件を借りるのも内装をするのも凄くお金がかかる。また商品の仕入れやスタッフの人件費など考えると資金繰りは大変だ。そして、お客は冷たいときている。「素敵なお店」と言いながらも買うのはネットで買うのだ。あるいは写真だけ撮って自分のインスタ映えを狙われるかだ。でも店に反映するかは別として社会全体で考えたらその店が出来たことで需要が増えるのは確かだ。あとは自分の店に取り込める事ができるかの工夫だ。それはそれほど難しくは無いように思う。オリジナリティを出すことだ。ダブルネームにするのも良いし、仕入れ先に言ってオリジナルにしてもらったりも出来る。1店舗しかなくてもいろいろ工夫は出来ると思う。Maxfieldに行くと例えばCHANELの特別カラーのバッグがあったり、ROLEXの特別なものがあったりするから楽しい。特別なカラーオーダーをするのだろうが、そういう工夫は少し考えれば出来るはずだ。
店があって、通りが楽しくなって、街が良くなってゆく。こんな時代だからこそ新たな店がたくさんできて欲しいんだけどなぁ。今はつまんないよ。